撮影:浮間鮒子
スカパー! 他で視聴可能なCS局ファミリー劇場にて、
『秘密戦隊ゴレンジャー』誕生35周年を記念して、
8月9日(月)より『ゴレンジャー』の放送がスタート!
そこで、ゴレンジャーのNo.2、
新命明ことアオレンジャーを演じた名優・宮内洋に、
『ゴレンジャー』35年目の夏にアオレンジャー役を
存分に語って頂いた!!
プロフィール
1947年6月14日生まれ・東京都出身・双子座。
学生時代より丹波哲郎に師事し、日大商学部卒業後、東映ニューフェイス第12期生となる。
69年、TVドラマ『ああ忠臣蔵』で俳優デビュー。
70年、TVドラマ『キイハンター』にレギュラー入り。73年、『仮面ライダーV3』で主人公のV3こと風見志郎を演じ、一躍人気者に。以降、『秘 密戦隊ゴレンジャー』(75年)、『快傑ズバット』(77年)、『ジャッカー電撃隊』(77年)と立て続けにヒーロー役を演じた、名実共に日本が誇るヒー ロー役者となる。
他、『暴れん坊将軍』(78年)や『Gメン75』(79年)など、大人向け1時間ドラマでの代表作も多数。
–『ゴレンジャー』出演の経緯をお聞かせください。
ちょうど『仮面ライダーV3』が終わった後です。私自身が東映の役者ですから、選ぶことも何もできなかった。東映から与えられた仕事で「これが終わったら今度はこれだよ」と、持ってこられたお話で。
マネージャーがいた訳でもないですし、ただ東映の所属の俳優が東映の作る作品を「お前、やれ!」と言われてそのままやったと、いうことですよね(笑)。
よく「『仮面ライダーV3』のオーディションのときに、宮内はドアを蹴破って入って来た」と言われるんですけど、いたのは半分以上は東映のプロ デューサー関係ですから。毎日放送の局長はじめ何人かいて、揃ってそれに決めるかどうかというのはあったんですけど、東映の中では宮内で決定していたみた いで。
てっきり僕はオーディションかと思っていたんですけど、オーディションでもなんでもなくて。
ただ、「面(ツラ)を見せろ」というだけの話で(笑)。
その『仮面ライダー(V3)』が終わって、「次は『ゴレンジャー』という作品があるから」と言われて、「そんなにできませんよ」と。
当時、京都で『必殺』シリーズ(『助け人走る』[74年])が入っていて。京都で3日間ほしい、と。
あと『刑事くん』(第4シリーズ/74年)、TBSの渥美清さん主演の『ヨイショ』(74年)というスタジオものが入っていたんです。
『ヨイショ』と『刑事くん』で1日半ずつ、京都で3日間、そうすると1日しかない。
「だったら出番が多くない役を振るから」と言うから。
だけど、隊長に右を向けと言われて「ハイ!」と右を向いたり、左向けと言われて「ハイ!」と左を向くような、そんなような役だったら演りたくないと言ったんです(笑)。
そうしたら、「人物に位置付けをするために、両雄という形にしようじゃないか」と。「例えばアカレンジャーを一応主役としよう。
アオレンジャーだっら、君が演るものをサブリーダーとして持っていって、(宮本)武蔵と(佐々木)小次郎という形でもってやるから」。で、スケジュールが空いているときはとにかくガンガン! 使う、と。そういうような形
でやった作品です。
そのうちなんか、「おい宮内、明日から5日間空いてるぞ!」なんていうと、今度はアオレンジャーじゃなくて新命明編みたいなのばっか書き込まれて。 書き込まれている中で、それだけじゃあまた僕が気が済まなくて。やれ「ここで火薬を使う」とか「崖のある場所を捜してきて」とか(笑)。「滝がある所を捜 してきて」とかそういうような無理な注文をつけて。
“絶対にこの『ゴレンジャー』の中でもそういったことはやらないだろう”というようなところばかりを全面的にガンガン出していった。出番は少ないけ ど、出たときにはインパクトが強い、と。で、新命明でなくてもアオレンジャーが出ていれば、=(イコール)つながっていますので。ズーッと全部出ているん だという風に視聴者の方には印象はつけているんです。
アオレンジャーは全部出ているんですよ。だからまぁ、新命明も出ているんだろうと、そういった風で新命明=アオレンジャーですから、そういう風に視 聴者のみなさんには思って頂いたということですね。そうですね、多いときには6本だか7本だかをまとめて僕だけアフレコやったことがありますね(笑)。
–忘れられない撮影の思い出として、真冬の鳥取砂丘の浜辺で新命が海からあがってくるシーン(第39話「真赤な日本海!怪隕石の超能力」脚本:曽 田博久/監督:山田稔)を、よく挙げられていますが、真冬の日本海でズブ濡れになって、その後はどうされたんですか? DVDで観直していても気になって仕方がないもので……。
あそこから茶屋というか売店というんですか……あそこにしかお風呂がない訳ですね。そこに行くためには砂漠……雪でもう一面真っ白 になっている鳥取砂丘を歩いて行くしかない。とにかく、死にかけたような(笑)。寒いじゃない、「痛い」(笑)。ということでやっとお風呂に着いたんです けど。制作(担当)とあと殺陣師の方に「風呂に入るなよ!」と言われた訳です。まず、水道の水をジャーッとかけて、それから今度、水とお湯を半々にかけて いって徐々に慣らしていかないと……。「急にお風呂に入っちゃダメだ」と。僕的にはもちろんドボンとお風呂に入りたかったんですけど(笑)。
–画面で観ても唇の色が真っ青で、尋常ではない寒さが伝わってくるのですが……。
メイクじゃないんです。
ウェットスーツが着られないような衣裳を僕は付けていましたから(笑)。僕、宮内洋が演ずるヒーロー像というのは、「衣裳を変えない」というのが全 面的にありますので、今まで赤いシャツを着て変身したらアオレンジャーになり、次の週には黄色い服を着て変身したらアオレンジャーになるというのは子供が 錯覚するだろうと。
同時に『ライダー』でも『ズバット』でもそうですが、変身前の人間は衣裳替えをしないというのが、僕の持論と申しましょうか、役柄といつも一緒とい うのがありますので。そのときは、特別に鳥取ロケーションに行く訳ですから、衣裳を変えても良いのでしょうけど(笑)。波止場から海に落ちるとき、そこで はいわゆるベトナム帰りの兵士さんが着るようなモスグリーンのものを着ているんです。
で、海に何回か飛び込んだときに、分からないようにウェットスーツは仕込んであります。4回落っこってるんですよ(笑)。
–衣裳へのこだわりをお聞かせください。
考えてみると、赤いシャツに黒いベスト、これは『(快傑)ズバット』かと思ったらもう、『ゴレンジャー』のときにその色の配色で着ているんですね (笑)。帽子も黒のテンガロンハットを被っていて、「なんだこれは?!」と思って一瞬観たら、「なんだ『快傑ズバット』じゃないか!?」ってなったんです けど(笑)。まぁ、『ズバット』は革に変えたというだけのお話で。
で、中の赤はいわゆる光沢のある赤で。その違いがあるんですけど。
–面白いことにV3=風見志郎のほうが青い衣裳なんですよね?
だから風見志郎のフィギュアなんていうのは、白いパンツルックに白のベストに中が紺のYシャツですから。
このフィギュアが出てるから、これはもう完全な風見志郎のコスチュームなんだと、みなさん思ってらっしゃる。
1年間の『仮面ライダーV3』の中でも当初13本というのは、革なのかなぁ?
黒で腕だけが白いジャンパーを着ているんです。頭はカツラでしたけど。だから13本は全然衣裳が変わっていないですね。それ以降はちょこちょこ何種類かいろいろ変わっているんでしょうが、途中からはその白のベストにパンツルックに紺のYシャツ。
途中でゲストの方が出た場合に、革のツナギを着たんですけど。
「ヒーローというのは、そんなに衣裳替えをしてはいけないんだな」というのが僕の持論でしたから。鳥取の砂丘のときも、何か理由をつけ て、特別にパイロット服でも着ていれば、そんな(バリブルーンが)不時着しても、中でウェットスーツを着てひっくり返っていても良かったんでしょうけど (笑)、そこまではちょっと考えなかったですね。
後の『(特警)ウインスペクター』(90年)、『(特急指令)ソルブレイン』(91年)のときはいわゆる警察機構の制服ですからね。変身もしないで、「(掛け声で)ウィヤ!」なんていうときはちょっとまたゾクッとしたりなんかして(笑)。
–そういった意味では一番印象的な衣裳は『ジャッカー電撃隊』の番場壮吉(第23話より登場)ですが(笑)。
あゝあれは白のスリーピースですね。
中が赤で……「撮影に間に合わないかもしれない」というので、「間に合わせてほしい」と言って。トランプの4色ですから、「その4色のリボンを作って」と言って、作ってもらって(笑)。
「なんであんな派手な蝶ネクタイなんかやってんの?」
「いや、あれはトランプの4色なんだよ」と(笑)。
–あのステッキは宮内さんご自身のアイディアでしょうか?
そうです。
白いステッキを使う。
なんで使うかというと、ステッキで帽子を上げたりとか、ステッキを回したりとか、「いろんなことができるだろう、武器にも使えるし」ということで。 立ち回りのときも白いバッシュと、白の普通のエナメルと……履き物というのはとても重要なんですけど、立ち回りするときにね。ですから水に入る用 とそうでない荒地の所用と、それからアスファルト用と、履き物は全部、最低3種類は用意してもらうのも、これも宮内のこだわりかもしれません。
それから「なんだカッコつけやがって、いつも手袋なんかしやがって」と言うかもしれませんが、あれはカッコつけでもなんでもないんです。手袋というのは例えば、ジャリ道なんかでトンボ切ったりなんかすると手を着いたときに必ずケガをするんです。
そのときに手をガードするための、ひとつの自分の武道具ですから。そのための手袋であって、別にカッコつけの手袋ではないんです。
これは千葉真一先輩から教わったんです(ドラマ『キイハンター』でご共演)。
あの方、普通にスーツにネクタイを付けて、何故か草原でもってアクションをやろうとすると必ず黒い手袋をしてたんです。
「なんでかなぁ?」と思ったら、「切り株があっても何してもケガをしないように」と。それじゃあ逆に僕はもう、当初から手袋を前面に出して売ってしまおう、と思って。
ということで、普段使わないときには胸のポケットにいれる、もう、小道具として堂々と使ってしまおう、と。そういう狙いがあってのことなので。やっぱりファンの間にもそういうこだわりを持っていらっしゃる方が多いんですよね?(笑)
2010.6.29.東映俳優センター会議室にて/インタビュアー:岩佐陽一(BAD TASTE)